ベルリンの南50kmほどの所にダ−レビッツ(Dahlewitz)と言う村があります。ここにブルーノ・タウトが自ら設計し、台頭してきたナチス政権を逃れて来日するまで住んでいた旧宅があります。来日して書いた「日本・タウトの日記」にも良く出てくる旧宅で、タウトが思いを馳せていた事を思わせます。かってこの住宅を訪問した際に現在の所有者である女流画家から「旧宅の損傷が激しくなっているのでタウトファンの多い日本からも修復の援助をしてもらえないか」と打診を受けたことがありました。日本経済新聞の文化欄、その他を通じて寄付を呼びかけましたが、日本の経済状態は悪化の一途をたどりとても寄付を仰ぐ状況ではなくなりました。その間にタウト設計のベルリンの集合住宅4件が2008年7月にユネスコの世界文化遺産に指定されるようになりました。そしてドイツでもタウトの名が有名になりました。その結果旧宅の建つブランデンブルグ州と重要建築物保存協会が修復の予算をつけてくれることになりました。この住宅は現在個人も所有であります。日本で寄付集めを始めようとしたときにも「個人の所有」ということが問題になりました。外国にある個人財産の価値を寄付金で修復し高めるという事は憲法違反であるという事まで言う人も現れました。ドイツでは「老婦人が旧東独の乏しい年金で有名建築を維持管理してきたことだけでも素晴らしいことであり、ここに公的資金を導入することは問題が無い」との事でした。古いものを大切にするということで、ドイツ人の考え方に感服した次第です。

旧宅庭側、白い外壁

旧宅道路側のチャコールグレーの外壁

旧宅の外壁には「記念建築物」のプレートが貼られている。

旧宅の居間。タウトが日本で唯一残した作品旧日向別邸(熱海市)の居間と雰囲気が似る。旧宅ではこの段に腰掛けてダーレビッツの森を見た。

旧宅の居間から見た隣接するダーレビッツの森と自宅の庭。ここに見るようにタウトは放熱器にも着色した。ポンプを使用しない重力式温水暖房のため放熱器は大きい。
posted by 田中の住居学 at 00:00|
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建築家ブルーノ・タウト
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